カシマコートヒストリー#1 潤滑性アルマイトの登場
我社の独自アルマイト技術である硬質潤滑アルマイト“カシマコート”は、今から約40年前の1981年に、創業の地、浜松市・呉松町で誕生した。
潤滑系アルマイトの登場
開発背景を一言で言うと、車の“軽量化”という時代背景がある。
1960年以降今もなお、車の燃費向上と車体・部品の軽量化が強く求められている。
CO2発生ゼロの電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)も出現したが、軽量化による動力源の節約、効率向上の必要性は益々重要になってきている。
一部の自動車部品や機械部品材料は鉄から1/3の比重であるアルミニウムに変遷していった。
しかし、アルミニウムは柔らかい為、鉄の代替えとしてそのまま使用出来ず、硬質皮膜処理等を施して使用されるケースが多い。更に機械部品では当然ながら摺動・摩擦による摩耗防止の為、硬さに潤滑性を付与する潤滑系アルマイトが登場し始めた。
当時、金属表面処理産業界は機能性アルマイト、機能性メッキ、機能性塗装等で活気を帯びた。
この時期、テフロン系の潤滑アルマイトが国内に導入され、潤滑性・非粘着性・耐食性・電気絶縁性等の付加価値により一世を風靡した。
技術開発着手:硬質アルマイト層と潤滑剤の共存
潤滑アルマイトに使用する潤滑剤は固体潤滑剤が多く、アルマイトの多孔質構造で形成される皮膜表面をアンカーとして、代表的な3つの固体潤滑剤(テフロン・グラファイト・二硫化モリブデン)が表面に塗布されていた。
硬質アルマイト処理を専業とする株式会社ミヤキはこのような潤滑剤層がアルマイト表面のみに存在する当時の潤滑硬質アルマイト技術を鑑み、表面だけでなく、硬質アルマイト層の厚さ全域を固体潤滑剤で含浸する技術の開発に着手した。
いわゆる、皮膜が存在する限り硬質アルマイト層と潤滑剤が常に共存し、一定の安定した摺動性を維持する『金太郎飴』的皮膜の開発だ。
不可能から発想の転換
ベテランの研究員が日夜徹底的に試行錯誤の研究を行い、含浸する潤滑剤は3大固体潤滑剤の中で最も汎用性の高い二硫化モリブデンに決定した。
だが、二硫化モリブデンは最小粒径でもアルマイト皮膜の微細な孔に含浸するには不可能な大きさ・形状だった。
そのままの粒径で微細孔径の底部へ取り込むことは困難を極めた。
そこで発想を転換し、電気化学的に二硫化モリブデンを微細化することで、多孔質底部から二硫化モリブデン(MoS2)を規則的に析出させる技術を開発した。
研究開発から約3年ーー
1981年11月、この処理技術を「カシマコート®︎」と命名。
国内外15件の特許出願をした。
誕生まで幾多の困難を乗り越え、開発から実用化を経て40年弱の歳月が経過した。
創業の地、浜松市民の気質を表す(※1)「やらまいか精神」というワードの如く、困難な発想への挑戦が今の株式会社ミヤキを形成していると言って過言ではない。
※1「やらまいか」は「やろうじゃないか」や「しましょうか」と言う遠州地方の方言だが、単なる方言ではなく、遠州人の「あれこれ考え悩むより、まず行動しよう」と言う進取の精神を表すものと言われている。