カシマコートヒストリー#2 カシマコートの発展
カシマコートの発展
カシマコートの誕生から製品実用化までの道のりはそう長くはなかった。
開発背景に記したように、当時各自動車メーカーは軽量化の新材料を必死に模索していた。
エンジンの鋳鉄製部品をアルミに転換する為、たまたま図書館へ訪れた某カーメーカー設計課長。
そこで彼の目に留まったのがカシマコートのレポートだった。
その出会いが後に、カシマコート初の自動車量産部品となったのだ。
この製品は40年弱経過の現在までに約3億個以上がカシマコートされ、約3千万台以上の乗用車にトラブルなく搭載されている。
この設計者との出会いが、カシマコートの運命を決めたといっても過言ではない。
当然ながら採用に至るまで様々なテストや品質確認が行われた。
テスト車10台のエンジンにアルミ化したカシマコート部品を搭載し、厳冬の北海道を20万km走行してカシマコートの耐久性を厳密に観察した。
その結果、走行距離が延びるたびにカシマコート処理部の潤滑性能が向上していることが確認された。
これは摺動相手材との摩擦熱で、電気化学的に微細孔に充填されていたMoS2がより強固な結晶構造になることが後に分かった。
この現象(時間が経つほど潤滑性が向上してくる)と金太郎飴構造が世界中のどこの誰もが真似ることのできない2大特長となる。
世界唯一の技術は、母材に施された硬質アルマイトが摩耗して無くならない限り、MoS2と共存し、未来永劫に潤滑アルマイトとして存在することができるのだ。
FOX社との出会い
リーマンショックの翌年2009年(平成21年)のある日、英語で一本の電話がかかってきた。
通話状態も良くなく、相手の言うことが聞き取れない。最初は間違い電話かとも思った程だった。
だが、その電話は翌週もかかってきた。
徐々に分かってきたことは、世界有数の競技自転車用サスペンションメーカーFOX社であった。
FOX社は、カシマコートのことを徹底的に調べ、その技術を導入したいという強いオファーであった。
我々はすぐさま渡米し、プレゼンを行い、様々なトライアルを行った。
それは一筋縄ではいかぬもので、挫折しかけたこともあった。
試行錯誤を繰り返すこと約2年の月日が流れた。
FOX社の求めるカシマコートの性能を遺憾なく発揮できる製品に仕上がった。
一種類の製品から採用が始まったカシマコートは、現在では各カテゴリーの上位モデルに採用されている。
その後、独占供給契約(※2)を締結し、今では定番となった『GENUINE KASHIMA COAT®︎』のシルク印刷ロゴが入ることとなった。
※2 FOX社以外の自転車サスペンション部品への処理は行わないという契約