潤滑油なしでも摺動可能? カシマコート®の低摩擦メカニズム

Index目次
はじめに
機械部品の摺動部では、摩耗や焼付きが大きな課題となります。
通常は潤滑油やグリスを使用して摩擦を低減しますが、
- 給脂が困難な環境
- メンテナンス頻度を減らしたい設備
- ベアリングやブッシュを削減したい設計
- 低温環境や真空環境
などでは、潤滑剤に頼らない対策が求められるケースがあります。
こうした課題に対し、
有効な選択肢の一つが「カシマコート」です。
カシマコートは、硬質アルマイトの高い耐摩耗性と、
二硫化モリブデン(MoS₂)の潤滑性を組み合わせた表面処理です。
本記事では、なぜカシマコートが低摩擦・低摩耗を実現できるのか、
そのメカニズムを解説します。
1.なぜ摺動部品は摩耗や焼付きが発生するのか?
金属同士が接触しながら相対運動を行うと、
接触面では常に摩擦が発生します。
摩擦が大きくなると、
- 摩耗の進行
- 発熱
- 凝着摩耗
- 焼付き
といった現象が発生します。
特にアルミニウムは鉄鋼材料と比較して表面硬度が低いため、
そのままでは摺動用途に不向きです。
そのため、耐摩耗性や潤滑性を付与する
表面処理が重要になります。
2.カシマコート®とは
カシマコートは、硬質アルマイト皮膜に
二硫化モリブデン(MoS₂)を皮膜内に析出させる
㈱ミヤキ独自技術の潤滑性アルマイトです。
硬質アルマイトの特徴である
- 高硬度
- 耐摩耗性
- 軽量性
に加え、
- 摩擦係数の低減
- 焼付き抑制
- 摺動安定性向上
が期待できます。
そのため、
- ガイド部品
- シャフト
- 軸受部
- 搬送装置
- ベアリングレス設計部品
などで採用されています。
3.二硫化モリブデン(MoS₂)が潤滑性を発揮する理由
二硫化モリブデンは、
1個のモリブデン原子と2個の硫黄原子から構成される化合物です。
化学式では「MoS₂」と表記されます。
その特徴は独特な層状結晶構造です。
モリブデン(Mo)と硫黄(S)の結合は強固ですが、
硫黄層同士の結合は非常に弱くなっています。
このため、層と層の間で容易に滑りが発生し、
優れた潤滑性を発揮します。
この構造により、
- 摩擦の低減
- 初期摩耗の抑制
- 焼付きリスクの低減
に効果を発揮します。
二硫化モリブデンについてさらに知りたい方はこちらの記事でご確認下さい。
4.摩擦熱によって特性がさらに発揮される
摺動部では摩擦による発熱が発生します。
境界潤滑領域では局所的に
200~700℃程度の高温となる場合もあります。
このような条件下では、カシマコートに含まれる二硫化モリブデンの
結晶配向が促進されます。
結晶配向が進むことで、
せん断応力が低下し、より滑りやすい状態になります。
その結果、摩擦係数が低下し、耐摩耗性向上につながります。
5.硬質アルマイトの加熱硬化現象
カシマコートの母材である硬質アルマイトには、加熱により硬度が増加する現象が知られています。
摺動時の発熱によって硬質アルマイトの硬度が高まると、
皮膜の耐摩耗性が向上します。
つまり、
- 二硫化モリブデンによる潤滑効果
- 硬質アルマイトによる高硬度効果
が相乗的に働くことで、安定した摺動特性を発揮します。
6.トライボロジーの観点から見たカシマコート®
トライボロジーでは、
摩擦係数は表面のせん断応力と硬度の関係で考えられます。
表面が滑りやすくなるほど摩擦は低下し、
硬度が高くなるほど耐摩耗性は向上します。
カシマコートは、
- 二硫化モリブデンによる低せん断化
- 硬質アルマイトによる高硬度化
を両立しているため、
低摩擦かつ高耐摩耗な摺動面を形成できます。
7.ベアリングレス設計への活用
近年では軽量化や部品点数削減の観点から、
ベアリングやブッシュを使用しない
「ベアリングレス設計」が注目されています。
しかし、単純に軸受け部品を削減すると摩耗や焼付きのリスクが高まります。
カシマコートは、
- 摩耗の抑制
- 凝着の抑制
- 焼付きリスクの低減
に寄与するため、
ベアリングレス設計を検討する際の有力な選択肢となります。
ADC12材の摺動部品でベアリングレスの事例は
こちらの記事で紹介しております。
まとめ
カシマコートは、単なる硬質アルマイトではありません。
硬質アルマイトの高い耐摩耗性と、
二硫化モリブデン(MoS₂)の潤滑性を組み合わせることで、
摩耗・凝着・焼付きの抑制に効果を発揮します。
特に、
- 給脂が難しい環境
- ベアリングレス設計
- 軽量化を求める用途
- 摺動部品の長寿命化
を検討されている場合に有効な表面処理です。
潤滑油に頼らない摺動対策を
ご検討の際は、お気軽にご相談ください。