動いていないのに摩耗する? フレッティング摩耗の怖さと原因・対策

Index目次
Ⅰ. フレッティング摩耗とは?
接触している2つの部品の間に非常に小さな相対運動が
繰り返し発生することで起こる摩耗です。
一般的な摺動摩耗では、
部品同士が比較的大きな距離を移動します。
一方、フレッティング摩耗では、
数μm~数十μm程度の非常に小さな動きでも、
繰り返し発生することで摩耗につながります。
例えば、
- 振動
- 繰り返し荷重
- 回転による振れ
- 温度変化による熱膨張・収縮
などによって、接触面に微小な滑りが発生することがあります。
外から見ると部品はほとんど動いていなくても、
接触面ではわずかな相対運動が発生しています。
これが繰り返されることで、接触面が徐々に損傷していきます。
Ⅱ. なぜ動いていないのに摩耗するのか?
フレッティング摩耗を理解するポイントは、
「動いていない」のではなく、「非常に小さく動いている」
ということです。
例えば、ボルトで2つの部品を締結した場合を考えてみます。
ボルトによって強く締め付けられているため、
一見、部品同士は完全に固定されています。
しかし、機械が振動したり、繰り返し荷重を受けたりすると、
部品はわずかに変形します。
その結果、接触面ではわずかな滑りが発生することがあります。
イメージとしては、
接触 → 微小な滑り → 軽度の損傷 → 摩耗粉が発生 → さらに表面が損傷
というサイクルが繰り返されます。
一回の動きは非常に小さくても、
それが何万回、何百万回と繰り返されれば、無視できない摩耗になります。
「固定しているから大丈夫」とは限らない
フレッティング摩耗が厄介なのは、
目視では「動いている」と判らないことです。
例えば、
ボルト締結部だから動かない
圧入しているから動かない
部品同士が密着しているから摩耗しない
と考えていても、振動や繰り返し荷重によって
接触面に微小な相対運動が発生していれば、
フレッティング摩耗が起こる可能性が十分あります。
Ⅲ. フレッティング摩耗が発生しやすい場所
フレッティング摩耗は、部品同士が接触していて、
なおかつ振動や繰り返し荷重を受ける場所で発生しやすくなります。
代表的な発生箇所には、次のようなものがあります。
◆ボルト締結部
ボルトで部品同士を強く締結していても、
外部から振動や繰り返し荷重が加わると、
接触面に微小な滑りが発生することがあります。
その結果、接触面に摩耗や傷が発生する場合があります。
◆圧入部
軸と穴などを圧入して固定している部分でも、繰り返し荷重や振動によって
非常に小さな相対運動が発生することがあります。
このような場合にもフレッティング摩耗が問題となることがあります。
◆軸とハブなどの嵌合部
回転機械などでは、軸とハブの接触面に繰り返し荷重が加わることで、
微小な滑りが発生する場合があります。
◆軸受・歯車・スプラインなど
機械要素の接触部でも、振動や繰り返し荷重によって
フレッティングが発生することがあります。
特に、通常の運転時には大きく動かない部品でも、
停止中の振動や輸送時の振動などが原因となる場合があります。
Ⅳ. フレッティング摩耗の怖さとは?
フレッティング摩耗の怖さは、
単純に「表面が削れる」ことだけではありません。
◆摩耗粉が発生する
接触面が繰り返し擦られることで、微細な摩耗粉が発生します。
摩耗粉が接触面に残ることで、
研磨剤と化してさらに表面を傷つけ、
摩耗を促進したりする場合があります。
また、鉄系材料では酸化した摩耗粉が発生し、
赤褐色の粉末状の生成物が見られることがあります。
◆接触面の寸法が変化する
摩耗が進行すると、接触面の形状や寸法が変化します。
圧入部や嵌合部では、摩耗によって隙間が生じ、
さらに微小な動きが大きくなるという悪循環につながる可能性があります。
◆フレッティング疲労につながることがある
さらに注意したいのが、フレッティング疲労です。
フレッティングによって表面が損傷すると、
その部分が疲労亀裂の起点となり、
繰り返し荷重によって亀裂に進展することがあります。
つまり、フレッティングは、
表面の微小な摩耗 → 表面損傷 → 疲労亀裂
へ発展する可能性があります。
そのため、単なる「摩耗による寿命低下」
として片付けられないケースがあります。
Ⅴ. フレッティング摩耗とフレッティング疲労の違い
フレッティング摩耗とフレッティング疲労は、
どちらも微小な相対運動によって発生しますが、
現象としては区別して考える必要があります。
| 現象 | 主な特徴 |
| フレッティング摩耗 | 微小な滑りによって接触面が摩耗する |
| フレッティング疲労 | フレッティングによる表面損傷を起点として疲労亀裂が発生・進展する |
実際の部品では、両者が完全に独立しているとは限りません。
フレッティングによって表面が損傷し、
その損傷が疲労亀裂の起点になることもあります。
そのため、「摩耗しているだけだから大丈夫」と判断せず、
使用条件によっては疲労破壊まで考える必要があります。
Ⅵ. フレッティング摩耗の原因
フレッティング摩耗は、一つの原因だけで発生するとは限りません。
代表的な要因には、
- 振動
- 繰り返し荷重
- 接触圧力
- 微小な相対運動
- 表面粗さ
- 材料の組み合わせ
- 潤滑状態
- 温度や環境
などがあります。
特に重要なのが、接触面にどの程度の微小な滑りが発生しているかです。
同じ材料・同じ荷重であっても、接触面の動きや振動条件が変われば、
フレッティング摩耗の発生状況も変わります。
そのため、対策を考える際には、単純に「硬い材料に変更する」だけではなく、
実際の使用条件を確認することが重要です。
Ⅶ. フレッティング摩耗の対策
フレッティング摩耗の対策は、発生原因によって変わります。
代表的な方法は次の通りです。
① 微小な相対運動を抑える
フレッティング摩耗の根本的な対策は、接触面で発生する微小な相対運動を抑えることです。
例えば、
- 締結力の見直し
- 接触面積の見直し
- 部品形状の変更
- 支持方法の変更
- 振動の低減
などが考えられます。
② 潤滑する
接触面に適切な潤滑剤を使用することで、
摩擦を低減し、摩耗を抑えられる場合があります。
ただし、潤滑剤が使用できない環境や、
長期間にわたってメンテナンスが難しい部品では、別の対策が必要になります。
③ 材料や相手材を見直す
接触する材料の組み合わせを変更することで、
摩耗や焼付きの発生を抑えられる場合があります。
特にアルミニウム同士の接触では、
材料の硬度や摩擦特性を考慮することが重要です。
④ 表面処理を利用する
部品の表面に硬質な皮膜を形成したり、潤滑性を付与したりすることで、
フレッティング摩耗を低減できる場合があります。
アルミ部品では、硬質アルマイトやカシマコートなどの
表面処理が選択肢となります。
Ⅷ. 硬質アルマイトやカシマコートによる対策
◆硬質アルマイト
硬質アルマイトは、アルミニウム表面に硬質な酸化皮膜を形成する表面処理です。
アルミニウムそのものよりも硬い皮膜を形成することで、
接触面の耐摩耗性を向上させることができます。
そのため、「アルミ部品の接触面が摩耗している」
という場合には、硬質アルマイトが対策の一つとなります。
ただし、フレッティング摩耗は単純な硬度だけで決まる現象ではありません。
振動、接触圧力、相手材、微小な滑り量などによって結果が変わるため、
使用条件を含めて検討する必要があります。
◆カシマコート
フレッティング摩耗では、表面硬度だけでなく
摩擦を低減することも重要です。
カシマコートは、硬質アルマイト皮膜に
二硫化モリブデン(MoS₂)由来の潤滑性を付与した表面処理です。
硬質アルマイトによる耐摩耗性に加え、
潤滑性を付与することで、摩擦や焼付きが問題となる摺動部品などへの適用が期待できます。
特に、
- アルミニウム部品同士が接触する
- 潤滑油の使用が難しい
- 摩擦・摩耗を低減したい
- 振動による微小な滑りが問題となっている
このような環境では、検討するべき表面処理の一つです。
ただし、フレッティング摩耗への効果は、
荷重、接触圧力、振動、相手材、環境などによって変わります。
そのため、実際の使用条件に合わせて評価することが重要です。
カシマコートの低摩擦メカニズムについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
Ⅸ. まとめ
フレッティング摩耗は、部品同士が大きく動いていなくても、
非常に小さな相対運動が繰り返されることで発生する摩耗です。
そのため、
「固定しているから摩耗しない」
とは限りません。
ボルト締結部、圧入部、嵌合部などでも、
振動や繰り返し荷重によって接触面に微小な滑りが起これば、
フレッティング摩耗につながる可能性があります。
また、フレッティングによる表面損傷が疲労亀裂の起点となり、
フレッティング疲労へ発展する場合があることにも注意が必要です。
対策としては、
- 微小な相対運動を抑える
- 締結条件や構造を見直す
- 潤滑によって摩擦を低減する
- 材料や相手材を見直す
- 表面処理によって耐摩耗性や潤滑性を向上させる
などが考えられます。
アルミニウム部品では、硬質アルマイトによる耐摩耗性の向上や、
さらに潤滑性を付与したカシマコートによる摩擦・摩耗対策も選択肢となります。
フレッティング摩耗は、
まず「なぜその場所で微小な相対運動が発生しているのか」
を考えることが対策の第一歩です。
摩耗が発生している場合は、
単に表面を硬くするだけではなく、
荷重・振動・接触状態・相手材などを含めて
原因を確認することが重要です。
▶ 摩耗の種類や発生メカニズムについてはこちら