腐食と摩耗が同時に起こるとどうなる?「腐食摩耗」の正体とは

Index目次
Ⅰ. 腐食摩耗とは
「腐食摩耗」とは、腐食と摩耗が同時に作用し、
それぞれが影響し合いながら進行する現象です。
腐食とは、金属が
水分や酸素、塩分、薬品などの影響によって表面から劣化する現象です。
一方、摩耗とは、部品同士の接触や摺動などによって、
材料の表面が徐々に削られる現象を指します。
腐食摩耗では、この2つの現象が単独で起こるのではなく、
腐食による表面の変化が摩耗を促進し、
摩耗によって露出した新しい金属表面が
さらに腐食するという相互作用が起こります。
特に、海水や塩水、薬液などの
腐食性環境で使用される摺動部品では注意が必要です。
異なる金属が接触することで発生する
ガルバニック腐食(異種金属接触腐食)などもその一つです。
腐食そのものについて詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。
Ⅱ. 腐食と摩耗が同時に起こるとどうなる?
腐食摩耗では、腐食と摩耗が繰り返されることで、
表面の劣化が進みやすくなります。
例えばアルミ部品の場合、
次のようなサイクルが起こります。
腐食 → 表面の劣化 → 摩耗による表面の除去 → 新しい金属表面の露出 → 再び腐食
腐食によって表面に生成物ができたり、
表面状態が変化したりすると、
その部分が摩擦によって取り除かれます。
すると、内部の新しい金属表面が露出します。
新しく露出した表面は、
再び腐食環境にさらされるため、さらに腐食が進行します。
このように、腐食と摩耗が互いに影響し合うことで、
単純な腐食や摩耗よりも表面の損傷が
進みやすくなるのが腐食摩耗の特徴です。
Ⅲ. 腐食摩耗はなぜ起こるのか
腐食摩耗は、腐食が起こりやすい環境と、
摩擦・摺動などの機械的作用が組み合わさることで発生します。
代表的な要因には、次のようなものがあります。
- 腐食性のある液体や雰囲気
- 水分や湿度
- 塩分
- 摩擦・摺動
- 荷重
- 摺動速度
- 面粗さ
- 異物
- 材料の組み合わせ
- 表面処理の状態
例えば、腐食環境で使用される部品に摺動が加わる場合、
腐食と摩耗の両方を対策する必要があります。
また、荷重が大きい、摺動速度が速い、異物が入り込む、
表面が粗いなどの条件により、摩耗の進行は加速します。
さらに、異なる金属が接触している場合には、
ガルバニック腐食などが加わる可能性もあります。
つまり腐食摩耗は、材料だけで決まるものではありません。
Ⅳ. 腐食摩耗が発生しやすい環境
代表的な環境には、次のようなものがあります。
▶海水・塩水環境
海水や融雪剤などによって塩分が存在する環境では、
金属の腐食が進みやすくなります。
そこに摺動や振動などが加わると、
腐食摩耗が発生する可能性があります。
▶薬液環境
酸やアルカリなどの薬液に接する部品では、腐食が進行しやすくなります。
さらに摺動が加わると、
腐食によって変化した表面が摩耗によって除去され、
腐食が繰り返されることがあります。
▶水分の多い環境
水や湿気が存在する環境では、
腐食と摩耗が同時に発生する可能性があります。
特に、潤滑が難しい場所や異物が入り込みやすい場所では注意が必要です。
▶異種金属が接触する環境
異種金属が接触し、さらに水分や塩分などが存在すると、
ガルバニック腐食が発生する場合があります。
こうした環境で摺動が加わると、腐食摩耗につながる可能性があります。
Ⅴ. 腐食摩耗と通常の腐食・摩耗との違い
腐食摩耗を理解するには、
通常の腐食や摩耗との違いを比較すると分かりやすくなります。
| 主な作用 | 代表的な条件 | |
| 摩耗 | 接触・相対運動による材料表面の損失 | 荷重、面粗さ、摺動速度、相手材など |
| 腐食 | 化学的・電気化学的な反応による 材料の劣化 |
水分、塩分、薬液、異種金属など |
| 腐食摩耗 | 腐食と摩耗が相互に影響 | 腐食環境+摩擦・摺動 |
▶摩耗だけが発生する場合
腐食性のない環境で部品同士が摺動している場合、
相手材との硬さや面粗さ、荷重などによって摩耗が発生します。
この場合、主な原因は機械的な作用です。
摩耗には、
- 凝着摩耗
- アブレシブ摩耗
- フレッティング摩耗
など、さまざまな種類があります。
▶腐食だけが発生する場合
部品が腐食環境に置かれていても、摩擦や相対運動がなければ、
材料の劣化は主に腐食によって進行します。
この場合は、使用環境に適した材料や表面処理などによって
腐食への対策を考えることになります。
▶腐食摩耗の場合
腐食環境に加えて摩擦や摺動が存在すると、
腐食と摩耗が複合して発生する可能性があります。
つまり、腐食と摩耗をそれぞれ別の問題として考えるだけではなく、
両者が組み合わさったときにどのような影響が生じるかを考える必要があります。
Ⅵ. 腐食摩耗の対策
腐食摩耗への対策では、腐食と摩耗の両方を考えることが重要です。
代表的な対策には、
- 材料の変更
- 表面処理
- 潤滑剤の使用
- 荷重や摺動条件の見直し
- 面粗さの改善
- 相手材との組み合わせの見直し
- 水分や異物の侵入防止
- 腐食環境からの隔離
などがあります。
例えば、腐食に強い材料へ変更しても、
摩耗に弱ければ十分な対策にならない場合があります。
逆に、耐摩耗性の高い材料や表面処理を採用しても、
腐食によって表面が劣化すれば、
期待した性能を維持できない場合があります。
そのため、
「腐食への対策」と「摩耗への対策」を別々に考えるのではなく、
使用環境と摺動条件を合わせて考えることが重要です。
また、実際の部品では、材料だけでなく、
荷重、摺動速度、相手材、潤滑状態、面粗さなどによって結果が変わります。
そのため、腐食摩耗の対策は、
実際の使用条件を把握したうえで検討する必要があります。
Ⅶ. アルミ部品の腐食摩耗と硬質アルマイト
アルミニウムは軽量で加工性に優れているため、多くの機械部品に使用されています。
一方で、摺動部品として使用する場合には、
アルミニウムの表面硬度や耐摩耗性が問題になることがあります。
そこで選択肢となるのが硬質アルマイトです。
硬質アルマイトでは、アルミニウム表面に比較的硬い酸化皮膜を形成することで、
耐摩耗性の向上が期待できます。
そのため、アルミ部品の摩耗対策として硬質アルマイトが採用されます。
ただし、腐食摩耗の場合は、単純に「硬い皮膜を付ければよい」とは限りません。
腐食環境、膜厚、部品形状、相手材、荷重、摺動速度、潤滑状態など、
実際の使用条件によって適切な対策は変わります。
つまり、
「どの表面処理が最も硬いか」ではなく、
「どのような環境で、どのような摩耗が発生しているのか」
を把握することが重要です。
硬質アルマイトについて詳しく知りたい方はこちら。
また、摩耗そのものについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
Ⅷ. まとめ
腐食摩耗とは、腐食と摩耗が相互に影響しながら、
材料表面の損傷を進行させる現象です。
特に、海水・塩水・薬液・湿潤環境などで使用される摺動部品では、
耐食性だけでなく耐摩耗性も含めて対策を考える必要があります。
アルミニウム部品では、
硬質アルマイトなどの表面処理も摩耗対策の選択肢となります。
ただし、腐食摩耗は使用環境や摺動条件によって発生メカニズムが変わるため、
まずは「どのような環境で、どのような摩耗が発生しているのか」
を把握することが重要です。
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