2025.06.03 更新

カシマコート vs 硬質アルマイト+フッ素樹脂コーティング 何を選択するべき? 

潤滑性と耐久性が求められるアルミ部品の表面処理において、設計者がよく直面する「どの処理を選べば最も効率的か?」という判断で悩むケースは多い。 今回は、潤滑性処理として広く知られる「カシマコート」と「硬質アルマイト+フッ素樹脂コーティング(PTEF等)」の2つを比較し、それぞれの強みと選定ポイントを解説します。

1.はじめに

●PTFE(フッ素樹脂)の規制について

欧州ではREACH規制によりPFASが規制されており、今後はPTFEも(2025年現在対象外)製造過程で使われる“PFOA・PFOS”が「PFAS」に分類される為、PTFEの使用も制限される可能性があると言われています。

●PFASとは

人体への有害性が指摘されている約4700種類以上の有機フッ素化合物を指します。非常に安定性が高い為、自然界に放出された場合自然分解しない為、“永遠の化学物質=フォーエバーケミカル”の別名があり人体や動植物の体内に蓄積される特性を持ちます。

2.処理構造の違いが性能差に直結する

カシマコートでは、アルマイト処理によって形成された微細孔(ナノ~ミクロンサイズ)に、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤が電解析出されるため、硬質皮膜の全てが摩耗しない限り潤滑性能が機能し続けます。

一方、フッ素樹脂(PTFE等)は高い滑り性を持つ一方で、粒子の大きさの関係でアルマイトの微細孔内に浸透・定着させることはできず、あくまで皮膜の外側に“乗っているだけ”の層であり、摩耗=潤滑層の喪失につながります。

カシマコートについては以下のバナーからどうぞ(公式ページへ飛びます)。

 

 

3.使用環境に応じた向き・不向き

●カシマコートが優位なケース

  • グリスや潤滑油が使えない場所(真空・極低温・食品薬品製造など)
  • 潤滑性を長期安定的に維持したい
  • 工程をシンプルにしたい(1工程で完結)

●フッ素樹脂コートが優位なケース

  • 高温環境(~260℃)や薬品耐性が必要な場面
  • 撥水性や非粘着性(離型性)を重視する用途
  • 滑り感などの機能性を持たせたい

 

4.メンテナンス性とコスト感

フッ素樹脂の再処理は劣化した旧フッ素樹脂の除去が困難で薬品や物理的な処理でアルマイト層も損傷を受ける事があります。PTFEスプレーなどを塗布する事も可能ですが効果は一時的で限定的です。全ての性能を復元させる為には既存皮膜を全て剥離しアルマイトからやり直さなければ完全な性能回復は見込めません。

5.見るべき選定のポイント

 

 

6.潤滑性の持続か、多機能性か

「潤滑性の持続性と一体構造の信頼性」で選ぶならカシマコート、

「高機能樹脂のバリエーションで多用途対応」するならフッ素樹脂系──。

どちらが優れている、というよりも、設計の目的や使用環境に応じて最適解が変わるのがこの2者の関係です。

迷ったときは、実際の使用条件と必要性能をすり合わせて、試作や相談を通じて最適化するのが一番の近道です。超高温下や撥水・離型性が前提の場合 → 硬質アルマイト+フッ素樹脂コーティング

トータルでのコストとメンテ負荷も含め、目的に応じた選定が重要です。

CONTACT US

お見積もり・お問い合わせ
はこちらまで