2025.10.14 更新

薄肉アルミ部品にアルマイト指定する前に知っておきたいこと

軽量化やデザイン性を重視する製品設計では、薄肉アルミ部品が採用されるケースが増えています。 しかし、アルマイト処理を施す際に「変形」「クラック」「膜厚ムラ」といったトラブルが発生することもございます。 この記事では、薄肉アルミ部品にアルマイトを指定する前に知っておきたい設計・材質・処理工程のポイントを整理します。

1. なぜ薄肉部品のアルマイト処理でトラブルが起こるのか

⑴ 熱・電解応力の影響を受けやすい

アルマイト処理は電解反応によって酸化皮膜を生成するプロセスです。

その際、局所的な発熱・電解応力が生じます。

薄肉材ではこの応力を逃がす余裕が少なく、

反りや歪みが発生しやすくなります。

⑵ 機械加工や成形応力の影響が残る

薄肉部品では、機械加工やプレス成形で残留応力が発生しやすく、

これがアルマイト処理中の応力集中やクラック発生の一因になります。

⑶ 膜厚のバラつきが起こりやすい

長物薄肉形状は、電解槽内での電流分布が不均一になり、

膜厚が集中する部位や逆に薄膜となる部位が出来る事があります。

見た目・性能のムラにつながる点は要注意です。

2. 設計段階でのチェックポイント

 ⑴肉厚の下限を明確に

一般的に、板厚1.0mm未満では変形リスクが高まります。

アルマイト皮膜の体積膨張も考慮し、

構造強度に余裕をもたせた設計が理想です。

⑵ 応力集中形状を避ける

角Rを設ける、肉厚の急変を避けるなど、

処理時の応力集中を緩和する工夫が効果的です。

⑶ 加工応力をリセットする

特に精密部品では、アルマイト処理前に

応力除去焼鈍(アニール処理)を行うことで、

応力が解放され、クラックや変形を抑制できます。

⑷ 材質選定も重要

同じアルミ合金でも、A5052やA6061などの展伸材系合金は比較的安定。

一方、ADC12などのダイカスト材は内部応力や鋳巣の影響を受けやすく注意が必要です。

3. 薄肉部品におすすめの処理仕様

処理タイプ 特徴 備考
普通アルマイト(硫酸系) 膜厚5~10μm程度、変形が少ない 装飾部品などに最適
硬質アルマイト 膜質が緻密で耐摩耗性◎ 厚膜では要注意
カシマコート 潤滑性+耐摩耗性を両立 硬質アルマイトで対応出来ない環境でも耐久性を確保

特にカシマコートは、皮膜を厚くしなくても潤滑性能が得られるため、

薄肉部品でも変形リスクを抑えつつ機能性を付与できます。

カシマコートについてはこちらの公式ページをご確認下さい。

4. まとめ:アルマイトは“素材との対話”が大切

薄肉部品は軽量で美しい反面、

処理工程での影響を受けやすい繊細な素材です。

設計・材質・加工・処理の各工程で協議しながら進めることで、

品質トラブルを防ぎ、より高い完成度の製品づくりが可能になります。

「アルマイト指定の前に一度相談」——それがトラブル防止の第一歩です。

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