①硬質アルマイト被膜のクラックの原因
硬質アルマイト被膜はアルミニウム表面に形成される酸化皮膜であり、その耐蝕性や耐摩耗性を向上させるために使用されます。しかし、以下のような要因によりクラック(皮膜割れ)が生じる恐れがあります。
1.応力集中
アルマイト皮膜は、0.2% 程度の加工変形が加えられると、弾性変形状態を維持できず、塑性域に達し、クラックが発生します。例えば、部品の変形や外部からの衝撃が原因となることがあります。これはアルミの変形にアルマイト被膜が追従出来無い事が原因です。
2.材料起因による処理不良
被膜形成中の処理不良や不均一な被膜厚さ、不適切な溶液組成などが原因となり、被膜内部に応力が生じて電解処理中にクラックが発生することがあります。この現象の発生にはアルミ素材の偏析等がキッカケとなる事もあります。この偏析とは部位により成分の偏りにより膜厚や処理中の熱や電圧も不意均一になる事も原因となる為アルミ材は信頼できる材料メーカーを選択する事をお勧め致します。
その他にもエッジやコーナー等、特殊な形状による皮膜の内部応力の不均衡などが原因となる事があります。角や隅の理想的な形状については(こちらのページ)でご確認下さい。
3.使用環境
アルマイト被膜が使用される環境条件(例えば、温度や湿度の変化、化学物質の影響など)もクラックの形成に影響を与える大きな原因となる事があります。
②硬質アルマイト被膜のクラック発生のメカニズム
一般的なクラックが発生するパターンはアルマイト製品が加熱されるとアルミ母材の熱膨張が起ります。アルマイト被膜も熱膨張は起こりますがアルミよりも圧倒的に少なく硬い被膜である為にアルミの膨張に追従する事が出来ない為クラックが発生してしまいます。
熱膨張係数はアルミ合金の種類によって様々です。
純アルミの熱膨張係数は23です。 これはつまり、温度が1℃上がる毎に1メートルあたり23μm伸びる性質があるということです。
アルマイト被膜の熱膨張係数はアルミの約1/5なので、1℃上昇しても1メートルあたり5~6μ程度しか膨張が起りません。これは1℃で約5倍の差10℃で約50倍の差が出来るという事になります。通常硬質アルマイトが100℃の環境においてクラックが発生する原理はこのようなメカニズムによります。以下に例題が御座いますので参考にして下さい。
例題1)
Q. 1mの棒状のアルマイト製品が20℃→120℃に加熱された時どんな現象が起こるでしょうか?
A. アルミ母材は約2.3mm膨張しますがアルマイト被膜は約0.5mmしか膨張しません。
その差約1.8mmは被膜を押し破る結果となります。この被膜を押し破る現象をクラックと呼びます。
➂クラックに強いシュウ酸アルマイト
①・②で説明した内容は一般的な硫酸系の硬質アルマイト処理のお話ですが
シュウ酸アルマイト(ミヤキ公式HPに飛びます)は硫酸を用いた硬質アルマイトと比べセル壁が厚く構造的にも非常に耐久性が高いバリアー層が出来る為、目立ったクラックが発生し難いという特性があります。
シュウ酸アルマイトには耐クラック以外にも処理後の面粗度が悪化しない事や高い耐食性能も備わっている為、硫酸系硬質アルマイトに比べやや高額にはなりますが、価格差以上のメリットがたくさんあります。
興味がある方は是非一度お問い合わせください。お問い合わせはこちら