2026.10.20 更新

なぜ今、アルミへ?金属価格高騰で変わる材料選びと表面処理

「最近、金属材料の価格が高くなった」 製造業の現場では、そんな声を聞く機会が増えています。 銅や真鍮などの非鉄金属をはじめ、さまざまな金属材料の価格が上昇するなか、 部品のコストを見直すために、 これまで使ってきた材料を別の材料へ変更することを検討するケースもあります。 そこで選択肢の一つとなるのが、アルミニウムです。 アルミニウムも以前に比べ近年価格が上昇していますが、 軽量性や加工性などの特徴を持ち、 用途によっては他の金属から変更することで、 部品全体のコストや重量を見直せて且つ製品自体の性能が向上する可能性があります。 ただし、アルミニウムはすべての性能で他の金属に勝っているわけではありません。 特に硬度や耐摩耗性、表面の傷つきやすさなどは、用途によって課題になることがあります。 そこで重要になるのが、アルミニウムの弱点を表面処理によって補うという考え方です。 この記事では、各種金属とアルミニウムの特徴を比較しながら、 なぜ今アルミニウムが材料選択の候補になるのか、 そしてアルミニウムを実際の部品に使用する際に 表面処理がどのような役割を果たすのかを解説します。

Ⅰ.金属価格の高騰で材料選びが変わっている

金属材料の価格は、原材料の需給だけでなく、

為替、エネルギー価格、

国際情勢などさまざまな要因の影響を受けます。

特に銅や真鍮などは、

もともとの材料価格がアルミニウムより高いことに加え、

価格変動の影響を受けやすい材料です。

そのため、部品の設計では単純に

「今まで使っていた材料をそのまま使い続ける」というだけでなく、

  • 材料そのものの価格
  • 部品の重量
  • 加工方法
  • 加工コスト
  • 耐久性
  • 必要な表面性能

などを含めて、材料を選ぶ必要があります。

つまり、材料選びでは「材料単価」だけではなく、

「部品として完成するまでのトータルコスト」を見ることが重要です。

Ⅱ.各種金属とアルミニウムを比較すると?

金属には、それぞれ得意な分野があります。

代表的な金属について、アルミニウムと比較してみましょう。

材料

主な特徴

アルミニウムと比較した特徴

鉄・鋼

強度・硬度に優れる 比重が大きい

ステンレス

耐食/薬品性・強度に優れる 比較的重い

銅

電気・熱伝導性に優れる 比重が大きく、材料価格も高い

真鍮

加工性・耐食性・熱伝導に優れる アルミより重い

アルミ

軽量・加工性・熱伝導性に優れる 硬度・耐摩耗性などに課題がある場合がある

もちろん、同じ金属でも

合金の種類によって性能は大きく異なります。

そのため、単純に

「アルミが一番優れている」ということではありません。

重要なのは、部品に求められる性能に対して、

どの材料が適しているかを考えることです。

Ⅲ.なぜアルミニウムが選択肢になるのか?

アルミニウムの大きな特徴の一つが、軽量性です。

アルミニウムの比重は約2.7で、鉄鋼材料の約3分の1です。

同じ大きさの部品であれば、

素材をアルミニウムに変更することで、

大幅な軽量化が期待できます。

また、アルミニウムは

切削、鋳造、鍛造、押出など、さまざまな加工方法に対応できます。

そのため、

  • 「軽量化したい」
  • 「加工性を確保したい」
  • 「材料コストを見直したい」

といった複数の要求を考えたとき、

アルミニウムが候補になることがあります。

例えば、従来は真鍮などを使用していた部品について、

必要な強度や機能を確認したうえで、

アルミ鍛造などへの材料変更を検討するケースも考えられます。

ただし、ここで注意したいのが、

材料をアルミニウムに変更すれば、

それだけですべての性能を

満たせるとは限らないということです。

Ⅳ.アルミニウムにも弱点はある

アルミニウムには多くのメリットがある一方で、

用途によっては弱点になる部分があります。

最も課題となるのが、表面の硬さや耐摩耗性です。

アルミニウムは鉄鋼材料などと比較すると表面が柔らかいため、

摺動部品や接触部品では、

摩耗や傷が問題になる場合があります。

また、アルミニウムは「錆びない」

というイメージを持たれることがありますが、

実際には腐食しないわけではありません。

アルミニウムは表面に緻密な酸化皮膜を

形成することで腐食から保護されていますが、

使用環境や異種金属との

接触などによって腐食が進む場合があります。

アルミニウムの錆の原因と対策については、

こちらの記事でも詳しく解説しています。

アルミニウムは本当に錆びる?原因と対策を現場目線で解説

さらに、部品の表面に傷がつきやすいことや、

摩耗が問題になることもあります。

では、こうしたアルミニウムの弱点をどう補えばよいのでしょうか。

Ⅴ.アルミニウムの弱点を補う「表面処理」

そこで重要になるのが、表面処理です。

材料そのものを変更するのではなく、

部品の表面に必要な機能を持たせることで、

アルミニウムの弱点を補うことができます。

その代表的な方法の一つが、アルマイト処理です。

アルマイトは、アルミニウムの表面に

人工的な酸化皮膜を形成する表面処理です。

アルミニウムそのものの特性を活かしながら、

表面に耐食性や硬さなどの機能を付加できます。

つまり、

アルミニウムの軽量性・加工性+表面処理による表面性能

という組み合わせによって、

材料単体では実現しにくい性能を狙うことができます。

Ⅵ.用途によって選ぶアルマイト

アルマイトにもさまざまな種類があります。

◆一般的なアルマイト

一般的なアルマイトは、アルミニウム表面の耐食性を高めるほか、

着色による外観性や識別性を付与することもできます。

アルミニウムを外装部品や一般的な

機械部品などに使用する場合に利用されます。

◆硬質アルマイト

摩耗や傷に対する性能が必要な場合には、

硬質アルマイトが選択肢になります。

一般的なアルマイトより厚く、硬い皮膜を形成することで、

アルミニウム表面の硬度や耐摩耗性を高めることができます。

そのため、

  • 摺動部品
  • 摩耗する機械部品
  • 接触部品
  • 治具
  • シリンダー部品

など、表面の耐久性が求められる用途で使用されています。

硬質アルマイトについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

硬質アルマイトとは?特徴・用途・デメリットを徹底解説【完全ガイド】

◆潤滑性が必要なら?

さらに、摩耗だけでなく摩擦や摩耗そのものを抑えたい場合には、

硬質アルマイトに潤滑性を付与する表面処理もあります。

用途によっては、材料変更と表面処理を組み合わせることで、

軽量化+コスト+耐摩耗性+潤滑性+耐食性

といった複数の要求に対応することができます。

詳しくはこちらの記事で説明しています。

潤滑性×耐摩耗でここまで違う! カシマコート®の活用は自転車とバイクだけじゃない

 

Ⅶ.材料選びは「金属単体」ではなく「材料+表面処理」で考える

金属価格が上昇すると、どうしても材料単価に目が向きます。

しかし、実際の部品設計では、

材料費だけでなく、重量・加工性・耐久性・腐食・摩耗、

表面処理まで含めて考えることが重要です。

アルミニウムは、すべての用途に適した万能な材料ではありません。

一方で、軽量性や加工性などのメリットを活かしながら、

弱点となる表面性能をアルマイトなどの表面処理で補うことで、

選択肢の幅を広げることができます。

金属価格が変化する今だからこそ、

「今までこの材料だったから」

という理由だけで材料を選ぶのではなく、

「必要な性能を満たしながら、どの材料と表面処理を組み合わせれば最適なのか」

という視点で考えることが、

これからの材料選びでは重要になってくるのではないでしょうか。

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