シュウ酸アルマイトと硫酸アルマイトの違い~用途に合わせたアルマイト処理の選び方~
アルマイト処理とは?
アルマイト処理は、アルミニウムの表面を酸化させ、人工的に酸化皮膜を形成する技術です。この皮膜は、耐食性、耐摩耗性、絶縁性を高める効果があり、工業製品や装飾品に広く利用されています。
アルマイト処理に使われる溶液の違いによって「シュウ酸アルマイト」と「硫酸アルマイト」に分類されますが、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?
➀シュウ酸アルマイトの特徴
シュウ酸アルマイトは、シュウ酸(C₂H₂O₄)を使用した電解液で処理されます。以下がその主な特徴です。
1.高い硬度
シュウ酸アルマイトは、非常に硬い酸化皮膜を形成します。そのため、耐摩耗性が必要な部品や工具に適しています。
2.高い耐クラック性能
シュウ酸アルマイトのバリヤー層は硫酸アルマイトのバリヤー層に比べ強固で厚くなる傾向がある為、熱や変形によるクラックが入り難い特性があります。
3.優れた耐食性
塩水や化学薬品に対する耐性が高く、過酷な環境で使用される製品に最適です。
4.装飾性より実用性重視
皮膜はやや暗い色になり、透明度が低いため、見た目よりも機能性を求める用途で使用されます。昔からある定番の薄金色のヤカンの色はシュウ酸アルマイトの自然発色で華やかさとは対極にある地味な色調も特徴の一つです。発色は膜厚を増やすほどに濃くなります。
5.面粗度を悪化させない
研磨済みの素材を硫酸アルマイト処理を行うと面粗さは悪化します(特に硬質アルマイトの厚膜処理)
しかし、シュウ酸アルマイト処理では面粗度を損なわずに処理が可能です。
6.主な用途
・航空機部品
・自動車部品
・工業用機械や工具
・調理器具(ヤカン・鍋等)
➁硫酸アルマイト(普通アルマイト)の特徴
硫酸アルマイトは、硫酸(H₂SO₄)を使用した電解液で処理されます。この方法はアルマイト処理の中でも最も一般的で、多くの用途に利用されています。
※ここで紹介している硫酸アルマイトとは白アルマイトを指しており同じ硫酸を使ったアルマイトでも硬質アルマイトは白アルマイトとは違った特徴があります。白アルマイトと硬質アルマイトの違いはこちらで紹介しています。
1.高い透明度
硫酸アルマイトは、透明度の高い皮膜を形成します。これにより、製品に鮮やかな仕上がりを与えることができます。
2.着色が容易
処理後、皮膜内に染料を入れることが比較的簡単で、装飾製品や家電や電子端末等によく使われます。
3.コストパフォーマンスの良さ
処理工程がシュウ酸処理に比べ比較的簡単で、短時間で済むため、低コストで実現可能です。
4.主な用途
電子機器部品
アルミ缶や装飾パネル等
➂どちらを選ぶべき?用途に合わせた選び方
耐久性が最優先の部品
高い耐摩耗性や耐食性が求められる場合は、シュウ酸アルマイト又は硫酸硬質アルマイトが最適です。航空機や自動車など、過酷な条件下で使用される部品に向いています。
見た目やデザインが重要な装飾用途
製品の外観や着色が重要な場合は、硫酸アルマイト(白アルマイト)が適しています。例えば家庭用品や装飾品に活用されます。
コストを抑えたい場合
硫酸アルマイト(白アルマイト)は処理が効率的でコストも低いため、簡易的な防錆用途や大量生産に適しています。
④まとめ
シュウ酸アルマイトと硫酸アルマイトは、それぞれ異なる強みを持っています。シュウ酸アルマイトは「硬さ」や「耐久性」が必要な工業用途に、硫酸アルマイトは「装飾性」や「コストパフォーマンス」が求められる製品に適しています。
しかし、シユウ酸アルマイトが出来るアルマイトメーカーは限れている為、どこのアルマイトメーカーでもオーダーが出来る訳では無い事も知っておいて下さい。
アルマイト処理を選ぶ際には、使用環境や求める性能をしっかりと考慮して最適な方法を選びましょう。
アルマイト専門メーカーである(株)ミヤキではもちろんシュウ酸アルマイトを取り扱っています。ミヤキコーポレートサイトのシュウ酸アルマイトのページも併せてご確認下さい。
アルマイト処理に関するご相談
アルマイト処理の詳細な情報や選択についてお悩みの場合は、ぜひお気軽に(株)ミヤキまでお問い合わせください。アルマイトの専門家が最適なご提案をいたします!