2024.01.09 更新

常識の壁を超えたアンセイとミヤキの挑戦

世の中に溢れる様々な製品は、製造に携わる一人ひとりの熱意や努力の上に成り立っている。
そんな当たり前のことに、改めて気づくエピソードを紹介する。

「使う人にとって満足」を妨げる重大な問題。

–愛知県大府市。

自動車製造が盛んなこの地で、大手完成車メーカーから高く評価される企業がある。
株式会社アンセイだ。
自動車のドアやボンネット、給油口には欠かせない「ラッチ」の製造をはじめ、多種多様なカーパーツを製造するメーカーである。

“アルミ部品の耐食性をグッと高めたい”
そう語るのは新規製品開発プロジェクトに携わったSさんとTさん。
確かに鉄は赤く錆びるが、アルミが赤く錆びているのは見たことが無い。
しかし、アルミも良く見ると白い腐食物質が発生し、錆びることがあるのだ。

「現代の車は軽量化のためにアルミを多く使っています。アルミは鉄の比重の1/3、材料をステンレスなど錆びない金属に変更することも考えましたが、材料コストも上がるし重量が増えてしまう。車の購入を検討してくれているお客様にとってコストアップや燃費の悪化は申し訳ないですし、チームでの重要事項の一つに位置付けて、この課題に取り組むことになりました。」「使う人にとって満足」をスローガンに掲げるアンセイらしい姿勢だ。
さっそく改善策を模索し始めた。

解決の糸口は「耐食性」と「防錆性」

さまざまな調査・検証を進めていく中で、錆の発生させる原因が見えてきた。

主に融雪剤や凍結防止剤に含まれる“塩分”が、アルミを腐食させてしまっている。

「いわゆる雪国では、塩分が含まれる薬剤を道路上に散布するのが一般的な方法なんです。
雪に含まれる水分と融雪剤の塩分が、腐食させる原因だったんですよ。」
原因が明確になれば、すぐにでも対策を施したいところだが「塩分でも錆びないアルミを作る」ことなど、果たして可能なのだろうか。

…考えを巡らせる中で、あることに気付く。
「シンプルな事なんですが、オートバイには軽量化のためにアルミが多く使われているのになぜ錆びないんだろうって。
当たり前のことなんですが、金属なのに潮風や水を浴びても錆びない理由が気になったんです。
きっとココに答えがあると思ったんですよ。」

すぐさま購買担当者が情報収集を行い、オートバイの外装部品にはアルマイトが多用されていることが判明した。さまざまなアルマイトメーカーの中から「ミヤキ」へアプローチをかけることにした。

「耐食性」と「防錆性」だけでは乗り越えられない壁

「錆を防ぎたいと聞いて、すぐに私たちの得意分野だと確信しました。」
そう語るのはミヤキの営業担当者。
「これまでも大小さまざまな船外機や、過酷な環境下でも耐食性・防錆性を誇る製品を製造してきました。
「MDプロセス」をベースにアルマイト処理を実施するビジョンがすぐに見えてきました。自信もあったし“これはやれる!”って思えましたね。」

すぐに両社の面談が行われ、ミヤキ側で試作品を提案することになった。
「お客様が抱える課題をミヤキの視点で因数分解し、納得ができるレベルのものを提案しました。」
しかし自信持って提案した試作品には、予想外の評価が下された。
耐食評価試験でNGとなったのだ。


もっと耐久性の高いものにしたい

これまでのノウハウの上に仕上げた試作品だったが、求められる品質は想像以上だった。

 

試行錯誤の末により良い製品が完成

ミヤキはすぐさま試作品と要望を持ち帰り、改良に取り組んだ。
「おそらく私たちが基準としている耐久性ではダメだと思ったんです。
プロジェクトチーム全体の意識を変えて行かないと次はないと思いました。」

電解条件の見直しを行い、最大限までアルマイトの膜厚をつける方法を試みた。
度重なるトライアンドエラーを繰り返しながら、限界まで耐食性を高めることが出来た。
改良を行なった試作品を再度アンセイへ提案し、ついに厳しい試験にクリアしたのだ。

「材料が不良が出やすいものだったので、どこまで出来るか不安はありました。
技術部を中心にみんなで知恵を出しあったことで、課題を克服することができました。
あの時はチーム一丸となって、高い壁を越えたような達成感がありましたね。」
ミヤキの営業担当者は、笑みを浮かべながら当時のことを語った。

眼前に立ちはだかる次の障壁

この出来事をきっかけに、堅牢な信頼関係で結ばれた両社。
アンセイとミヤキだから生まれる新しい挑戦がある。
「高耐久性を実現するために限界まで厚くした膜厚ですが、理想は膜厚はもっと薄くありたいんです。
電解時間が短縮されるので、生産コストも少なく出来るはずなんです。
その他の部品にも、薄膜で高耐久なアルマイトを実装できれば、公差管理もしやすくなります。」

理想を追求するアンセイと、それを実現しようと邁進するミヤキ。
両社の挑戦は終わらない。

Business Partnerお客様の紹介

株式会社アンセイ

〒474-8581 愛知県大府市北崎町大島30

日本国内に数社しかない「ラッチ」と呼ばれる、自動車用ロック装置の専門メーカー。
創業から70年を超え、国内外のさまざまな完成車メーカーから高い評価を得ている。
https://www.ansei.co.jp/

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