アルミダイカストの塗装が膨れる・剥がれるのはなぜ? ブリスター現象の原因と対策

Index目次
Ⅰ.結論|アルミダイカスト部品のブリスター現象は「塗料だけ」が原因とは限らない
アルミダイカストの塗装が膨れたり剥がれたりする原因は、1つとは限りません。
代表的な要因として、次のようなものが考えられます。
- 塗膜と素材の間に水分やガスなどが入り込む
- ダイカスト内部の鋳巣が影響する
- 表面に残った油分・汚れなどで密着性が低下する
- 表面処理や塗装前の前処理が適切でない
- 使用環境によって腐食が進行する
- 塗膜と素材の密着性が十分でない
つまり、ブリスター対策では塗料だけを見るのではなく、
「ダイカスト素材→表面→前処理→塗装→使用環境」まで含めて考えることが重要です。
■ブリスター現象とは?
ブリスター(blister)とは、塗膜の一部が膨れ上がる現象です。
塗膜の下に水分やガスなどが入り込んだり、素材と塗膜の間で腐食などの変化が生じたりすることで、
塗膜が押し上げられるように膨れることがあります。
見た目としては、
- 塗膜の一部が小さく膨れる
- 気泡のような膨らみが発生する
- 膨らみが大きくなり、最終的に塗膜が剥がれる
といった状態になります。
一見すると「塗料が浮いただけ」に見えますが、
塗膜の下で何らかの変化が起きているサインと考えることができます。
Ⅱ.なぜアルミダイカストでブリスターが問題になるのか?
アルミダイカストは、溶融したアルミ合金を金型へ高速・高圧で充填して成形する製法です。
大量生産に適している一方で、製品内部には鋳巣などの欠陥が存在する場合があります。
また、ダイカスト用アルミ合金は複数の元素を含んでいるため、
展伸材とは異なる金属組織を持っています。
そのため、塗装する場合には、
「アルミだから塗装すれば終わり」ではなく、ダイカスト特有の素材状態を考慮する必要があります。
■原因①|鋳巣や微細な空隙が影響する
ダイカストで注意したいのが鋳巣です。
鋳巣とは、鋳造時に内部へ残った空洞や気孔のことです。
鋳巣の位置や大きさ、表面とのつながり方によっては、
塗装後のトラブルにつながる可能性があります。
例えば、表面とつながった鋳巣や表面近傍の空隙がある場合、
- 水分や薬液などが入り込む
- 洗浄液が残留する
- 腐食の起点になる
- 塗装後に膨れが発生する
といった問題につながることがあります。
特にアルミダイカスト製品では、
表面からは見えない内部状態が塗装後の品質に影響することがあります。
■原因②|塗装前の表面に油分や汚れが残っている
塗装では、素材表面と塗膜がしっかり密着することが重要です。
しかし、ダイカストの製造工程では、
- 離型剤
- 切削油
- 加工油
- 汚れ
- その他の付着物
などが表面に残る場合があります。
このような状態で塗装すると、塗膜と素材の密着性が低下し、
後から塗膜が浮いたり剥がれたりする原因になります。
そのため、塗装前の洗浄・脱脂は非常に重要な工程です。
■原因③|表面処理・前処理が適切でない
塗装前には、素材表面を塗装に適した状態にするための前処理が行われます。
この工程が不十分だったり、素材に合っていない方法を選択したりすると、
塗膜の密着性が十分に得られないことがあります。
特にアルミダイカストでは、展伸材とは表面状態や組織が異なるため、
「アルミなら同じ処理でよい」と考えないことが重要です。
塗装する製品の材質、表面状態、使用環境などを考慮して、
適切な前処理・表面処理を選択する必要があります。
アルミニウムの表面には、空気に触れることで自然に酸化皮膜が形成されます。
そのため、アルミ素材に塗料をそのまま塗るだけでは、
十分な密着性を得にくい場合があります。
特にアルミダイカストでは、素材の表面状態や鋳造時の離型剤、加工油なども密着性に影響するため、
塗装前の洗浄・脱脂や適切な表面処理が重要です。
つまり、塗装の密着性を考える際には、
「どんな塗料を使うか」だけでなく、
「塗料を塗る前のアルミ表面をどのような状態にするか」が重要になります。
■原因④|腐食が塗膜の下で進行する
ブリスターと腐食が関係するケースもあります。
塗装されたダイカストが水分や塩分などにさらされると、
塗膜のわずかな隙間や欠陥から水分が侵入し、
素材側で腐食が進行することがあります。
◎腐食が関係する場合の一例
腐食の進行の順序
①腐食の発生
↓
②塗膜と素材の間に変化が生じる
↓
③塗膜が膨れる
↓
④さらに進行すると塗膜が剥がれる
そのため、ブリスター対策では塗装そのものだけでなく、塗装前の防食対策が重要です。
■原因⑤|使用環境が厳しい
塗装されたアルミダイカスト部品は、使用環境によって腐食リスクが大きく変わります。
特に注意したいのが、
- 海沿いなど塩分の影響を受ける環境
- 高湿度環境
- 結露が繰り返される環境
- 屋外で雨水にさらされる環境
- 温度変化が大きい環境
などです。
塗装によって表面を保護していても、
使用環境が厳しければ塗膜の劣化や腐食が進行する可能性があります。
したがって、表面処理や塗装方法を選ぶ際には、
実際に製品がどのような環境で使われるのかを考える必要があります。
アルミの腐食と環境についてはこちらで詳しく解説しております。
Ⅲ.ブリスターを防ぐためにできること
ブリスター対策では、塗装工程だけを改善するのではなく、
製品の製造から使用環境までを含めて考えることが重要です。
■対策①|ダイカスト素材の状態を確認する
まず確認したいのが、素材そのものの状態です。
特に、
- 鋳巣
- 表面状態
- 加工状態
- 離型剤などの残留
などを確認します。
塗装後に問題が発生してから対策するのではなく、
塗装前の段階で素材側の問題を把握することが重要です。
■対策③|ダイカストに適した表面処理を選ぶ
塗装する場合でも、塗装前の表面処理によって
防食性や塗膜の密着性を高められる場合があります。
重要なのは、
「どの塗料を使うか」だけではなく、
「その前にダイカスト表面をどう処理するか」
という考え方です。
特に防錆性が求められるアルミダイカスト製品では、
素材特性や使用環境に適した表面処理を選択することが重要になります。
■対策④|使用環境に合わせて防食レベルを考える
屋内で使用する製品と、屋外や塩分の影響を受ける製品では、
必要な防食性能が大きく異なります。
そのため、
使用環境 → 必要な耐食性 → 表面処理 → 塗装
という順番で考えると、処理方法を選びやすくなります。
Ⅳ.アルミダイカスト製品の塗装前処理に「MDコート」という選択肢
アルミダイカストの防錆や塗装下地を考える場合、
MDコートという表面処理があります。
MDコートは、アルミダイカスト製品の耐食性に特化した表面処理で、
ダイカストの防食対策や塗装下地として利用されています。
また、塗装前の表面処理として、
塗膜との密着性を考えるうえでも重要な役割を持ちます。
ダイカスト表面の状態を整え、塗装との組み合わせによって
塗膜の密着性や耐久性を考慮した処理ができます。
ダイカスト製品では、
「塗装だけで防錆できないか?」
と考えることもありますが、使用環境や素材状態によっては、
塗装前の段階で防食性を考えることが重要です。
特に、
- ダイカスト製品の腐食が気になる
- 塗装後に膨れや剥がれが発生する
- 塗装の耐久性を高めたい
- 塗装前の防錆処理を検討している
といった場合には、
塗装だけでなく塗装前の表面処理まで含めて検討することが一つの解決方法です。
MDコートについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
Ⅴ.まとめ|ブリスター対策は「塗装だけ」で考えない
アルミダイカストの塗装で発生する膨れや剥がれには、さまざまな原因があります。
特に重要なのは、
- ダイカスト内部の鋳巣や空隙
- 表面の油分・汚れ
- 塗装前の洗浄・脱脂
- 表面処理・前処理
- 使用環境
- 腐食の進行
などです。
つまり、ブリスター対策では、
「塗料を変えれば解決する」は通用しません。
ダイカスト素材 → 表面処理 → 塗装 → 使用環境
以上を一つの工程として考えることが、塗装トラブルを減らすポイントです。
アルミダイカストの腐食について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
ダイカストの腐食原因を理解したうえで、
製品の使用環境に適した防食方法を検討することが、
長期的な塗装外観の向上につながります。