2026.03.10 更新

1008時間SST試験に基づくアルミ陽極酸化皮膜の耐食特性ー実測データの公開 -

アルミ陽極酸化皮膜(以下、アルマイト)の耐食性は膜厚でどこまで変わるのか?1008時間SST試験の実測データをもとに、解説します。

概要

本稿では、ミヤキ技術部門が実施した最大1008時間のSST(塩水噴霧試験)及びCASS試験実測データをもとに、

アルマイト皮膜の耐食特性を検証した。

評価対象は、A2017、A5052、A6061、A6063、A7075、ADC12の主要アルミ材質であり、

膜厚は3µm、10µm、20µm条件で比較した。

耐食性評価は JIS H 8601 のレイティングナンバー基準を参考に、

SST試験 及びCASS試験により実施した。

1008時間にわたる長時間評価の結果、以下の知見が得られた。

  • 膜厚増加は耐食性向上に明確に寄与
  • 3µm皮膜は長時間領域で劣化傾向が顕在化
  • 材質差は存在するが、膜厚の影響がより支配的
  • 20µm仕様は重耐食環境に対して高い安定性を示した

本データはカタログ転載値ではなく、品質設計および顧客提案を目的として取得された一次実測データである。

本稿では、実務設計に活用可能な定量的知見を提示する。

背景と目的

アルミニウムは軽量・高強度・加工性に優れる材料であり、

輸送機器、建築部材、産業機器など幅広い分野で使用されている。

一方で、使用環境によっては腐食対策が不可欠であり、

陽極酸化皮膜の膜厚設計は製品寿命を左右する重要な要素となる。

しかし実際の設計現場では、

  • 「10µmで十分なのか」
  • 「20µmにするとどの程度向上するのか」
  • 「材質による違いはどこまで考慮すべきか」

といった疑問に対し、長時間データに基づく説明が求められるケースが増えている。

本資料は、そうした実務的課題に対し、実測データをもとに分かりやすく整理することを目的とした。

試験方法

試験概要

耐食性評価は主として SST試験 により実施。
また、SST結果の妥当性確認を目的として、CASS試験 も並行実施し、評価傾向の整合性を確認している。

評価基準

評価は JIS H 8601 のレイティングナンバー(RN)を参考に判定。

  • RN10:腐食なし
  • RN9以上:実用上問題なし
  • RN7以下:腐食進行が認められた

評価対象

材質

  • A2017
  • A5052
  • A6061
  • A6063
  • A7075
  • ADC12

展伸材および鋳造材を含め、実際の使用頻度が高い材料を選定した。

膜厚条件

  • 粗材
  • 10µm
  • 20µm
  • シュウ酸アルマイト(10μ・3μ)

アルミ合金と相性が良い皮膜を選定した。

結果の概要

膜厚による違い

3µm

初期段階では高評価を示すものの、336時間以降で評価値低下が確認された。

長期使用環境では十分とは言い難い。

10µm

各材質において安定的な耐食性を発揮した。

168時間以降も大きな低下は見られず、一般屋内~準屋外用途には適した仕様と考えられる。

20µm

長時間領域においても高い評価を維持し、

1008時間時点でも安定性が確認された。屋外や重耐食環境に適した仕様である。

材質別・膜厚別実測データ(抜粋)

時間 10µm 20µm
168h 9.8 9.8
336h 9.8 9.8
1008h 9.8 9.8

5000系および6000系合金は比較的安定した結果を示した。

A7075は高強度材である一方、耐食面ではやや低下傾向を示すケースが見られた。

ADC12は鋳造材特有の組織影響により、展伸材より耐食性が劣る傾向が確認された。

ただし総合的には、

材質差よりも膜厚の影響が大きいという結果となった。

ADC12における薄膜評価(3µm参考データ)

ADC12材においては、膜厚を3µmから10µmへ増加させることで、

長時間領域における耐食安定性が明確に改善した。

原データ

※本表は視認性を調整した掲載版です。

本データは設計検討用途を想定した詳細資料として個別提供しております。

詳細な原データ(全時間・全材質)はお問い合わせフォームよりご請求ください。

実務設計への提案

本試験結果を踏まえ、以下の膜厚を推奨する。

使用環境

推奨膜厚

室内用途

10µm

屋外一般環境

15µm以上

海浜・重塩害環境

20µm以上

これらは実測データに基づく実務的な目安である。

ミヤキの品質姿勢

本試験は、単なる参考データではなく、

品質確認および設計提案の裏付けとして継続的に実施しているものである。

ミヤキ技術部門では、

  • 社内塩水噴霧設備による長時間評価
  • 材質横断比較データの蓄積
  • 実務設計に直結する提案体制

を通じて、数値に基づく信頼性ある提案を行っている。

まとめ

1008時間塩水噴霧試験の結果から、

  1. 膜厚増加は耐食性向上に大きく寄与する
  2. 3µm仕様は長期環境では十分でない可能性がある
  3. 材質差よりも膜厚設計が重要である
  4. 20µm仕様は重耐食環境で有効性が高い

という知見が得られた。

今後もミヤキは、実測データに基づく技術提案を通じて、

お客様製品の長期信頼性向上に貢献していきます。

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