医療・食品加工機器分野へのアルマイト応用(安全性、耐薬品性など)

Index目次
1. 医療・食品分野で求められる表面処理とは
医療機器や食品加工機器は、人体や食品に直接触れるため、他の分野以上に
「安全性」「清浄性」「耐薬品性」「抗菌性」
が求められます。具体的には、
- 有害物質を溶出しない
- 消毒や洗浄に使う薬品・熱水に耐える
- 長期間使用しても摩耗や腐食が起こりにくい
- 表面に雑菌が繁殖しにくいことも望ましい
こうした厳しい条件を満たすために活用されているのが、
アルマイト処理です。
2.医療・食品分野におけるアルマイトのメリット・デメリット一覧
アルマイト処理は数多くのメリットを持ちますが、
同時に知っておくべき特徴も存在します。
以下にまとめました。
3.医療機器分野での応用可能性と既存の一部活用例
例えば、錠剤の梱包装置や歯科治療器具部品は、
耐薬品性と同時に清浄性が求められます。
アルマイト皮膜は表面がセラミックのように安定しており、
雑菌が付着・繁殖しにくいため、洗浄・滅菌後も
清潔な状態を維持できます。
- 錠剤の梱包装置
軽量で耐摩耗性があり、薬品洗浄にも耐える部品に採用。
- 歯科治療器具部品
繰り返しの消毒や滅菌に対応しつつ、精度を維持。
- 眼科の診断用測定機器の部品
高精度が求められる測定系において、
軽量で寸法安定性のあるアルマイト処理部品が活用されています。
- 医療用ポンプ機器のピストン・スリーブ部品
カシマコートの採用で高寿命化し、メンテナンス頻度を半減。
これらに加え、手術用器具や検査機器の構成部品などにも応用が期待され、
軽量かつ耐薬品性に優れた表面処理として注目が高まっています。
4.食品加工機器分野での応用可能性
食品包装・充填機械や加工ライン部品においては、
摩耗・腐食防止や軽量化に加え、
食品包装・充填機械や食品加工ラインの部品において、
摩耗や腐食防止だけでなく、
表面に雑菌が繁殖しにくい特性が清浄性の維持に役立ちます。
- 調理器具(鍋、ヤカンなど)
耐摩耗性と耐食性を兼ね備え、美観と清浄性を保つ。
アルマイト発明の初期から今日まで使われている。
- 食品包装・充填機械の部品
薬品洗浄や酸・塩分を含む環境下でも安定した性能を維持。
さらに、食品加工ラインのローラーやガイド部品といった部位にも、
摩耗・腐食防止と軽量化の両面で応用可能性があります。
また法規制の面でも、
アルマイトは食品衛生法の※¹ポジティブリスト制度の対象外とされているため、
食品加工機器の設計や導入を検討する際に安心して活用できる点も大きなメリットです。
※¹ポジティブリスト制度とは
合成樹脂製の器具または容器包装を対象とし、
使用が許可された物質のみをリスト化し、
リストに無い合成樹脂を原則使用禁止とする制度で
金属・天然物・ゴムなどの材質は対象外となっています。
5.導入時のポイント
医療・食品機器分野でアルマイトを活用する際は、
以下の点に注意すると効果を最大化できます。
- 膜厚の最適化
一般的には10〜30µm程度。用途に応じて調整
- 封孔処理の有無を検討
耐薬品性・耐食性を高める場合に有効ですが、
硬度が低下する事も注意。
- 材質選定を慎重に
合金成分によって皮膜の均一性や耐久性が変わる
- 耐熱条件を考慮
特に硬質アルマイトは100℃を超える使用環境には不向き
- シュウ酸アルマイトの活用
硫酸アルマイトよりも耐熱性や耐蝕性が高く、強固なセル壁を持ち、
硫黄分を含まないクリーンな皮膜で医療・食品用途に適しています。
6.まとめ
アルマイト処理は、医療・食品機器分野で求められる
「安全性」「耐薬品性」「耐摩耗性」」「抗菌性」を備えた表面処理として有望です。
現在は一部の装置や器具に採用されている段階ですが、
今後は抗菌性を活かした応用も広がっていく可能性があります。
ただし、封孔処理による硬度低下や、
硬質アルマイトは100℃を超える環境でクラックが発生しやすいといった特性を理解したうえで、
使用条件に応じた膜厚設計や処理条件を検討することが不可欠です。
ミヤキでは、医療・食品機器用途に適したアルマイト処理のご提案が可能です。
設計段階からのご相談・試作も承っていますので、
ぜひお気軽にお問い合わせください。