2025.02.18 更新

硬質アルマイトの封孔処理が硬度に与える影響とは

硬質アルマイトの封孔処理は、耐食性を向上させる反面、硬度を低下させる可能性がある ため、使用用途に応じて封孔方法を選択することが重要です。 この記事では目的に応じた最適な封孔処理について説明をさせて頂いています。

1.硬質アルマイトとは

硬質アルマイトは、アルミニウムの表面に比較的厚い酸化皮膜を形成する処理で、耐摩耗性と耐食性を向上させるために使用されます。材質にもよりますが一般的に、硬質アルマイトの硬度は HV350~400 ほどで、セラミックに近い特性を持ちます。

2.封孔処理とは

封孔処理(シーリング)は、アルマイト皮膜の微細な孔を埋める工程であり、主に以下の目的で行われます。

  • 耐食性の向上(腐食因子の侵入を防ぐ)
  • 着色性の向上(染色処理後の色の定着)
  • 汚れ防止(汚染物質が孔に入り込むのを防ぐ)

封孔処理には、以下のような方法があります。

  1. 熱水封孔(約95~100℃の熱水で処理)
  2. 酢酸ニッケル封孔(耐摩耗性と耐食性に特化した処理)
  3. 蒸気封孔(蒸気を用いた高温封孔)

3.硬度への影響

封孔処理はアルマイトの硬度に 若干の影響を与える ことが知られています。その影響の程度は封孔方法によります。

一般的な材質の封孔の硬度に与える影響(酢酸Ni封孔と蒸気封孔の比較)

条件:硬質アルマイト(膜厚:25μ)封孔条件:酢酸Ni(90℃5分)蒸気封孔(0.2MPa120℃20分)

上記のデータは特定の条件下の結果であり必ず同じ結果となる事を保証するものではありません。(当サイトの情報を転載、複製、改変等は禁止いたします)

① 熱水封孔の影響

設備及び工程が簡易でコストは低めに出来るが硬度低下の傾向が著しい

アルミナ(Al₂O₃)がボーエマイト(AlOOH)に変化する、この原理を応用し、皮膜を膨張させ柔らかくして皮膜の膨張を利用し皮膜表面の微細孔を閉じていくのが熱水封孔です。高温長時間の処理を行うと更に影響が大きくなります。

② 酢酸ニッケル封孔の影響

表面の摩耗特性を向上させる特性がある為、摩擦の多い環境に適している。

熱水封孔ほどの硬度の低下が起こらないため、硬質アルマイトとの相性が良い

③ 蒸気封孔の影響

硬度低下が少ない

高温・短時間で処理できるため、皮膜の膨張を最小限に抑えられる

しかし、設備や維持管理のコストが高額化する為コスト的には不利

又、複雑な形状の製品においては蒸気が均一に行き渡らない事があると封孔が不完全になることがある。特に注意が必要なのは小さな孔の内径等です。

 

 

 

4.最適な封孔処理の選び方

・耐摩耗性を重視→酢酸ニッケル封孔又は蒸気封孔

・耐食性とコスト重視→熱水封孔

・バランス重視(コスト、硬度、耐食性)→酢酸ニッケル封孔

5.まとめ

硬度を維持しつつ耐食性も向上させたい場合、酢酸ニッケル封孔が最適です。

特に、摩耗や腐食が懸念される用途(摺動部品、海洋環境工業機械部品)では熱水封孔よりも酢酸ニッケル封孔の方が適していることが多いです。

㈱ミヤキでは酢酸ニッケル封孔を標準としています。

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