2025.02.24 更新

アルミニウムの表面硬度と面粗さ耐摩耗を考慮した失敗しない表面処理選びについて

アルミニウムの表面硬度と面粗さは、耐摩耗性に大きく影響を与えます。以下に、これらの要素が耐摩耗性に及ぼす影響と、具体的な改善方法について説明します。

1.表面硬度と耐摩耗性

一般的に、表面硬度が高いほど、耐摩耗性が向上します。アルミニウムは軽量で加工性に優れていますが、純粋な状態では硬度が低く、摩耗しやすい傾向があります。そのため、耐摩耗性を高めるためには、表面硬度を向上させることが重要です。具体的な方法として、以下のような表面処理が挙げられます。

 

 

 

2.アルミニウムの表面硬度と耐摩耗性を向上させる表面処理について

①陽極酸化処理(アルマイト処理)

アルミニウムの表面を酸化させ、耐食性・耐摩耗性を向上させる処理。通常のアルマイト(普通アルマイト)と、より硬度が高い硬質アルマイト(ハードアルマイト)があります。

性能

  • 硬度:硬質アルマイトはHv350~500と比較的高い
  • 耐食性:非常に優秀(特に硫酸アルマイト)
  • 表面仕上げ:多少の粗さは残るが、表面硬度は高い
  • 潤滑性:多孔質のため、含油性は良好

コスト

低~中(普通アルマイトは最も安価、硬質アルマイトはやや高め)

適用例

  • 自動車・航空機部品(軽量化が求められる部分)
  • 建築・家電製品の外装
  • 産業機械の摺動部

総合評価

コストパフォーマンスに優れ、特に耐食性に優れるが、過酷な摩耗環境では限界がある。過酷な摩耗環境では潤滑性硬質アルマイトと呼ばれるさらに特殊なカシマコート等を採用することで対応可能となります。

②硬質クロムめっき

アルミニウムの表面にクロム層を形成し、摩擦係数を低減しながら硬度と耐摩耗性を向上させる。

性能

  • 硬度:Hv700~1000(非常に高い)
  • 耐食性:比較的優秀(ただし、膜にピンホールが発生しやすいため防錆処理が必要な場合あり)
  • 表面仕上げ:滑らかで光沢があり、摺動特性が良い
  • 潤滑性:低摩擦で潤滑性が良好

コスト

中~高(めっき槽の大きさや排水処理コストが影響)

適用例

  • 金型、ロール、ピストンリング、摺動部品
  • 自動車・航空機のエンジン部品
  • 精密機械の耐摩耗部品

総合評価

耐摩耗性が非常に高く、摩擦を抑えられるが、コストがやや高め。防錆対策が必要になる場合がある。

③無電解ニッケルめっき(Ni-Pめっき)

リンを含むニッケル合金を均一に析出させるめっき処理。熱処理を行うことで硬度を大幅に向上させることが可能。アルミニウムの耐摩耗性を向上させるための3種類の代表的な表面処理(陽極酸化処理、硬質クロムめっき、無電解ニッケルめっき)について、コストと性能のバランスを比較すると以下のようになります。

性能

  • 硬度:熱処理後でHv800~1000(非常に高い)
  • 耐食性:ピンホールが少なく、耐食性が高い
  • 表面仕上げ:均一で平滑な仕上がり
  • 潤滑性:めっき単体ではあまり良くないが、テフロン複合めっきなどで改善可能

コスト

中~高(熱処理を加えるとさらにコスト増)

適用例

  • 自動車・航空機の精密部品
  • 金型、摺動部品
  • 電子部品(導電性・耐摩耗性が求められる用途)

総合評価

均一な膜厚と高い耐食性を持ち、熱処理で耐摩耗性を強化できるが、コストは比較的高め。

④カシマコート(潤滑性硬質アルマイト処理)

カシマコートは、アルマイト(陽極酸化処理)に二硫化モリブデン(MoS₂)を含ませることで、耐摩耗性と潤滑性を大幅に向上させた処理です。 通常のアルマイトよりも摺動特性が向上し、摩擦係数が軽減するため、摺動部品などの摩耗対策に優れた効果を発揮します。

性能

  • 硬度:Hv350~500と比較的高い
  • 耐食性:非常に優秀(硬質アルマイト同様)
  • 表面仕上げ:多少の粗さは残るが、表面硬度が高い仕上げにバフ研磨を追加する事で仕上がりは最高に
  • 潤滑性:微細孔内に潤滑物質の二硫化モリブデンを析出させている為、被膜が失われるまで潤滑性能が維持される

コスト感

適用例

  • バイクや自動車のサスペンション(フォーク、スライドピストン)
  • 摺動部品(ピストン、シリンダー)
  • 産業機械の摩耗部品(ガイドレールなど)

 

総合評価

カシマコートは、耐摩耗性・潤滑性・耐食性を向上させながら、コストを抑えられるため、性能とコストのバランスが最も優れた表面処理方法と言います。

3.まとめ

比較表

カシマコートのメリット

低摩擦・高耐摩耗性→摩擦係数が低く、摺動部品に最適
軽量で高強度なアルミを活用→軽量化が求められる用途に適している

耐食性が高い→アルマイトの特性をそのまま活かせる
コストバランスが良い→硬質クロムめっきや無電解Ni-Pめっきに比べてコストが抑えられる

結論:カシマコートがコストと性能のバランスで最適

カシマコートは、耐摩耗性・潤滑性・耐食性を向上させながら、コストを抑えられるため、性能とコストのバランスが最も優れた表面処理方法と言います。 特に摩擦の少ない摺動環境を求める場合は、硬質クロムめっきや無電解ニッケルめっきと比べても非常に魅力的な選択肢になります。

カシマコートの詳細についてはこちらからどうぞ(公式ページに飛びます)

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