2025.02.04 更新

アルミとアルマイトの膨張率 温度変化がもたらす影響と対策

アルミニウムは軽量で加工性に優れ、耐腐食性を高めるためにアルマイト(陽極酸化処理)が広く施されています。しかし、アルミニウム基材とアルマイト皮膜は異なる膨張率を持つため、温度変化が大きい環境では両者の膨張率の違いが構造や性能に影響を及ぼすことがあります。本記事では、アルミとアルマイトの膨張率に関する基礎知識や、その影響、対策について詳しく解説します。

1.アルミとアルマイトの膨張率の基本

(1) アルミニウムの膨張率

線膨張係数

ルミニウムの線膨張係数(α)は約 23 × 10⁻⁶ /°C(0°C~100°Cの範囲)

これは温度が1°C上昇するごとに、アルミニウムが元の長さの23万分の1だけ膨張することを意味します。

(2) アルマイト(酸化アルミニウム被膜)の膨張率

アルマイト被膜の主成分である酸化アルミニウム(Al₂O₃)は、アルミ基材に比べて膨張率が低いです。

線膨張係数

約 7~8 × 10⁻⁶ /°C。

これは、アルミ基材に比べて約1/3程度の膨張率であるため、温度変化により発生する応力の原因となります。

(3) アルミ基材とアルマイト被膜の膨張率の差

アルミニウムとアルマイトの膨張率の差は約 3倍 あり、温度変化が大きい環境ではこれが応力を生じさせ、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 亀裂(クラック)の発生
  • 剥離
  • 耐久性の低下

 

2.温度変化による影響

(1) 高温環境での影響

アルミ基材が大きく膨張する一方、アルマイト皮膜はそれほど膨張しないため、皮膜に引っ張り応力が発生します。

特に300°Cを超えるような温度では、アルマイト皮膜が脆化し、微細なクラックや剥離が発生するリスクが高まります。

(2) 低温環境での影響

アルミ基材が収縮する速度が速い一方で、アルマイト皮膜は収縮が少ないため、基材と皮膜の間に圧縮応力が生じます。

極低温(-50°C以下)では、アルマイト皮膜が衝撃に対して脆弱になりやすくなります。

そもそも母材のアルミも靭性を失う程の低温環境となる為アルマイト皮膜単自体が大きな影響を受けないとしても基材が脆くなるとその形状を維持する事は困難です。

(3) 急激な温度変化(熱衝撃)

温度変化が急激に起こると、膨張・収縮の速度差によって、アルマイト皮膜が破壊される可能性があります。

 

3.実例と問題点

(1) 実例

航空宇宙

航空機やロケットの部材では、高温(再突入時)と極低温(大気圏外)の温度差により、アルマイト被膜の耐久性が課題となる場合があります。

(2) 主な問題点

  • 皮膜の剥離や亀裂
  • 耐腐食性の低下
  • 機械的強度の低下

 

4.膨張率の差に対する対策

(1) 被膜の設計最適化

厚すぎるアルマイト皮膜は基材との応力差を大きくするため、使用環境に応じた適切な膜厚を選定します。

一般的な硬質アルマイト処理の場合10~30μm程度の厚さが多いですが、高温環境では普通アルマイトを採用し、あえて薄目にすることで被膜の割れをある程度緩和する事ができます。

 (2) 急激な温度変化の回避

温度変化が予想される環境では、徐冷や断熱材を使用して熱衝撃を防ぎます。

5.まとめ

アルミとアルマイトの膨張率の差は、特に温度変化が大きい環境では無視できない要因です。アルミ基材の膨張率は約 23 × 10⁻⁶ /°C、アルマイト被膜の膨張率は約 7~8 × 10⁻⁶ /°C と大きく異なり、これが応力や被膜損傷の原因となります。

設計段階で温度変化による影響を十分に考慮し、膜厚や温度管理を適切に選定することで、性能と耐久性を維持することが可能です。この特性を理解し、適切に対応することで、アルミとアルマイトを活用した製品の信頼性を向上させることができます。

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