2024.05.21 更新

アルミ合金の偏析(へんせき)とは何ですか? アルマイト被膜に与える影響とは?

アルミ合金は、アルミと他の金属をブレンドした合金です。純粋なアルミは軽く腐食しにくい特性がありますが、強度はあまり高くありません。アルミ合金は、アルミと他の金属(例えば、銅、亜鉛、マグネシウム、鉛、またはシリコン等)を加えることで、強度・耐久性を向上させたり、特定の特性を得るために作られます。アルミ合金の偏析がアルマイト被膜に与える影響について解説していきます。

①アルミ二ウム合金の化学成分

合金番号 化学成分(wt%)
Si

(ケイ素)

Cu(銅) Mg

(マグネシウム)

Mn

(マンガン)

Zn

(亜鉛)

Fe

(鉄)

Ti

(チタン)

Pb

(鉛)

A1050 0.25以下 0.05以下 0.05以下 0.05以下 0.05以下 0.40以下 0.03以下
A2017 0.20-0.8 3.5-4.5 0.40-0.8 0.40-1.0 0.25以下 0.7以下 0.15以下
AC4A 8.0~10 0.25以下 0.30~0.6 0.30~0.6 0.25以下 0.55以下 0.2以下 0.1以下
ADC12 9.6~12 2~3.5 0.3以下 0.5以下 0.8以下 0.9以下 0.5以下

各元素にはアルミ二ウムの機械的性質を以下のように変化(強化)させる性質があります。

代表的な成分について詳しくは以下をご確認下さい。

・Si(ケイ素)

アルミの溶湯の流動性、耐熱間割れ性の向上および磨耗性の向上。Mgと共存し、Mg2Si析出相による析出強化の効果を持つ。

・Cu(銅)

アルミに対して固溶強化とAl2Cu相により強度向上の効果を持つ。

・Mg(マグネシウム)

アルミに対し強い固溶強化の効果を持ち、Siと共存するとMg2Si相により強度向上の効果を持つ。

・Mn(マンガン)

Feの多い合金に添加すると靭性と耐食性の劣化防止となる。

・Zn(亜鉛)

適量であれば、Mgと共存して著しい強度向上がある。

・Fe(鉄)

じん性を著しく低下させる。不純物

・Ti(チタン)

結晶粒を微細化する

Pb(鉛)

「快削性元素」と呼ばれる程の加工性を上げる元素です。

・Ni(ニッケル)

Cuを含む合金に添加すると高温強度を向上させる。

アルミ合金の偏析(へんせき)とは

アルミ合金の偏析とは、合金中の特定の元素が組織内で非均一に配分する現象を指します。この現象は、特に凝固過程中に起こります。

一般的に、アルミ合金は他の元素(例えば銅、マグネシウム、シリコンなど)との混合物であり、これらの元素は特定の割合で添加されています。凝固が始まると、液体中の元素は結晶化しながら固体へ移行します。しかし、結晶化過程では、元素が固体結晶に均等に分布するわけではなく、結晶が凝固する際に特定の元素が選択的に集中して結晶内に取り込まれることがあります。

この結果、合金中の特定の領域(通常は結晶境界や特定の結晶内)に元素が過剰または欠損することになります。この状態は、合金の物理的・化学的性質に影響を与える可能性があります。例えば、偏析が過剰であると結晶が脆性を持つことがあったり、特定の条件下で耐食性が低下することも考えられます。

アルミ合金の偏析がアルマイト処理に与える影響とは

アルミ合金の偏析がアルマイト処理に与える影響は、主に以下のような事象が起る可能性があります。

1.偏析による酸化皮膜の変化

特定の元素の偏析があると、皮膜の厚さや均一性に影響を与える可能性があります。

このような不均一な状態は皮膜割れや被膜剥がれの原因に発展する可能性があります。

想定通りの膜厚が付かない事によって嵌め合い寸法が狂い組付けNG等のトラブルが起こる事があります。

2.耐食性への影響

アルマイト処理は合金の耐食性を向上させることも目的の一つですが、偏析により耐食性に深刻な影響を与える可能性があります。偏析した領域は被膜が均一でないため、酸化皮膜の耐食性が一様でなくなることがあります。

3.耐摩耗性への影響

耐摩耗を目的としたアルマイト処理を行った場合に被膜硬度のバラつきが起った結果偏摩耗を起こし、耐久性に対し大きな問題が起る事があります。

4.色ムラや外観への影響

偏析により膜厚や自然発色のバラつきにより均一な染色にならない事が発生する恐れがあります。

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