2024.07.23 更新

おしえて!ケミスとトリー

EPISODE 07

アルマイト被膜の放熱特性-前編-

アルミニウムは熱伝導性に優れ且つ軽量で、加工性も良いということでヒートシンクとして古くから使われてきました。しかし、表面処理が施されていないアルミニウムの熱伝導は高いが放熱性は高いとはいえません。アルミニウムに陽極酸化皮膜(アルマイト)を施すことにより、遠赤外線の放射効果が高まり優れた放熱特性を示すようになります。

①熱伝導率とは

博士!熱伝導率とは何でしょうか?

熱伝導率とは、物質が熱をどれだけ効率よく伝達するかを数値化したものだよ。
熱伝導率が高い素材は熱を迅速に伝達し、熱伝導率が低い素材は断熱性質があると言えるのじゃ。

物質の状態つまり液体・気体等で熱伝導率は変わりますか?

さすがトリーさん良い事に気が付きましたね!
熱伝導率は固 体>液体>気体の順で高くなります。

家でも洋服でも空気の層を厚くして断熱しているのはそういう事なのですね!

  熱伝導率w/h/m/K
360
300
330
アルミ 190
61
アルマイト被膜 60~70

一般的な金属の熱伝導率

アルマイト被膜の熱伝導率はアルミニウムの約1/3程度だから高いとは言えないのじゃ。

アルマイト被膜を厚くすると熱伝導率が低下するのはこのような事が原因だったのですね。

断熱を目的とする場合は可能な限り厚膜化すると良いのじゃが、メッキや塗装と違って50μを超えるような膜厚は簡単ではない。

②アルマイト被膜の放熱性

熱を伝える伝導率は理解できました。次は放熱の説明もお願いします。

アルマイト(陽極酸化アルミ)の放熱性において、遠赤外線の放射特性が最も重要となるのじゃ!

遠赤外線の放熱性とは何の事ですか?

遠赤外線(波長約 3 µm から 1 mm)は、熱放射の一形態じゃ。物体が熱を放射する際、その波長帯域は物体の温度に依存するのじゃ。

ちょっと何言っているかわかりません。

つまり、遠赤外線は、比較的低温(数百度以下)の物体が主に放射する波長帯域です。

なぜアルマイト被膜は遠赤外線の放射率が高いのでしょうか?

それはね、表面仕上げと色、被膜構造によるものなんじゃ!

特に黒色アルマイトは、遠赤外線の放射率が高く、放熱性能を向上させることができるのじゃ!黒色は高い放射率を持ち、熱エネルギーを効率よく放出するのじゃ!

アルマイト被膜は多孔質構造を持ち、表面積が増加することで放射性能が向上します。表面積が大きいほど、より多くの熱エネルギーを放射することが可能じゃ!

アルマイト被膜の遠赤外線放射特性はどのような場面で使われていますか?

代表的なものはやはりヒートシンクじゃな!

電子機器の放熱フィンやヒートシンクにアルマイト被膜を施すことで、遠赤外線による放熱が促進され、デバイスの冷却性能が向上しますね!

それだけでは無いぞ自動車部品にも使われておるのじゃ!

自動車のどんな部品に使われいるのでしょう?

エンジン部品やブレーキ周りの部品など、高温になる部品にアルマイト被膜を施し、放熱性能を向上させ、部品の寿命を延ばす事に役立っておるのじゃ!

具体的にどんな効果があるのでしょうか?

そうじゃな、放射率の向上と熱管理の最適化かのぉ?

もっと判り易く教えて下さい!

アルマイト被膜、特に黒色アルマイトは、遠赤外線の放射率が高く、放熱性能を効果的に向上させ電子機器や高温環境下で使用される部品の熱管理を最適化する事が出来るのじゃ!

これらの効果によって製品の性能と信頼性・耐久性が向上するのですね!

話が長くなったので放射率の話は次回にしよう

後編はこちらからどうぞ。

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